ひとりぼっちのペンギンのおはなし
このよのどこかにある、小さな島のおはなしです。
むかしあるところに、いっぴきのペンギンがいました。
そのペンギンは、なかまたちのことばが
どうしてもおぼえられませんでした。
はじめはなかまたちもしんぱいにおもい、
やさしく声をかけていました。
ですがそのことばさえ、
何を言っているのかわかりません。
「どうしてボクは、おはなしができないんだろう」
ペンギンはしだいに、
ひとりぼっちになってしまいました。
ある日のことです。
ペンギンがねていると、
そこにひとりの男の人がやってきました。
「めずらしいな。
こんなところにペンギンがいるぞ」
「ボクに、なにかよう?」
ペンギンは男の人にたずねました。
すると、その男の人は目を大きくし、
口をパクパクさせました。
「おまえ、人のことばをはなせるのか」
しばらくのあいだ、
ペンギンは男の人とたくさんのおはなしをしました。
「なんでしゃべれるんだ」
「いつからしゃべれるようになったんだ」
「わたしといっしょに町へこないか」
ペンギンはうれしくてしょうがありません。
「にんげんとおはなしができる。
だから、ボクはきっとにんげんのなかまなんだ。
にんげんといっしょにくらすんだ。」
そのペンギンは男の人といっしょに、
人がたくさんいる町へむかって歩きはじめました。
つれられたさきは、
オリのなかでした。
つめたいゆかとつめたいそら。
そうです。
ペンギンはとじこめられてしまったのです。
その日から、ペンギンはみせものになりました。
「わあ、すごーい」
「ねえ、『こんにちわ』って言ってみてよ」
ペンギンはすっかりげんきをなくしてしまいました。
「ボクはにんげんのなかまになりたいだけなのに、
どうしてこんなところにいれるの?
だしてよ、たすけてよ」
やがて、ペンギンはしゃべらなくなりました。
だれがなにをきいても、もう口をひらこうとはしません。
「もうおまえにようはない。どこにでもいってしまえ」
おこった男の人は、ペンギンをおいだしてしましました。
ペンギンは、なきながらあるきつづけました。
「ボクは、ペンギンともにんげんともなかまになれないんだ」
なみだが、ぽろぽろとこぼれます。
のどはカラカラ、おなかもペコペコです。
「もう、どうにでもなっちゃえ」
そして、ペンギンはたおれこんで
目をとじてしまいました。
「どうしたの?けがしてるの?」
目をあけると、
そこにはおんなのこがのぞきこんでいました。
ペンギンは何もしゃべりません。
かわりに、おなかが「ぐー」となりました。
「おなかがすいてるの?
じゃあ、わたしのおうちにおいでよ」
「・・・いかない。ボクはもう、なかまなんていらないんだ」
ペンギンはそう言うと、またあるきだそうとしました。
するとおんなのこは、わらってこう言いました。
「なかまじゃないよ。ともだちだよ」
「ともだち?」
「うん。
いっしょにわらったり、ときどきおこったり、またわらったりするの。
それがともだち」
「ともだち」
ペンギンはなんどもそのことばを口にしました。
「いい、ことばだね」
「うん、いいことばだよ」
おんなのこは手をさしだしました。
「いこうよ。わたしとおともだちになろ?」
その日から、ペンギンはひとりぼっちではなくなりました。
そのあとのことは、よくわかりません。
でもきっと。
今はたくさんのともだちにかこまれて、
しあわせにくらしているかもしれませんね。
おしまい。
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